飯島耕一の逝去に

14日、詩人の飯島耕一が逝去した。享年83歳。

戦後史の第二世代も清岡卓行や吉岡実はすでに亡く、

健在なのは大岡信くらいになった。

飯島耕一の詩では、彼が鬱病から回復する1970年代半ばごろの作品が好きだ。

鬱病で自分の内部に閉じこもっていた詩人が、

徐々に現実世界に回帰してくる。

ごつごつと外部にぶちあたりながら、

自我や生命力がじわじわと湧き出してくる。

そういうイメージが、当時、まだ若年だった私の琴線に触れたのだろう。

「生きるとは

ゴヤのファースト・ネームを

知りたいと思うことだ。

ゴヤのロス・カプリチョスや

「聾の家」を

見たいと思うことだ。

見ることを拒否する病いから

一歩一歩 癒えて行く、

この感覚だ」 (「ゴヤのファースト・ネームは」)

 

「他人はきみのことを

たえず意識しつづけることはできない

きみはそれほど、

自分を過大評価することはない―

と先生は言われた。

(中略)

他人がきみを意識し

きみに客観の視線を向けたとする

しかし彼はきみを意識しつづけ

視つめつづけることはできない

それほど他者への意識の持続も

凝視の集中もあり得ない

意識はたえず対象から反れようとするのだ……。」 (「ある夏の終りの日」)

 

「戦後が終ると島が見える

少しずつ霽れてくる

戦後の霧が 朝まだきの

アルコールの霧が

空の霧が’(がたがた揺れるプロペラ機をつつむ霧)」

(中略)

わたしは宮古に教えられた

戦中と戦後意識のタガに

爪に

しっかりと頭を摑まれてしまったわたしは

宮古によってようやくそれからの離脱ができるかもしれないのだ。」 (「宮古」)

 

久々に古い詩集を取り出して

拾い読みをしてみた。

確かな言葉の手触りを楽しみながら。

合掌。

飯島耕一の逝去に」への2件のフィードバック

  1. tarake

    そういえば、
    鬱病になった飯島耕一に
    谷川俊太郎が
    「ウンコはちゃんとふけてるかい?」
    みたいな詩を書いてはったなあ、
    と思って読み返したらこんなんやった。

    にわかにいくつか詩みたいなもの書いたんだ
    こういう文体をつかんでね一応
    きみはウツ病で寝てるっていうけど
    ぼくはウツ病でまだ起きてる
    何をしていいかわからないから起きて書いてる
    書いてるんだからウツ病じゃないのかな
    でも何もかもつまらないよ
    モーツァルトまできらいになるんだ
    せめて何かにさわりたいよ
    いい細工の白木の箱か何かにね
    さわれたら撫でたいし
    もし撫でられたら次にはつかみたいよ
    つかめてもたたきつけるかもしれないが
    きみはどうなんだ
    きみの手の指はどうしてる
    親指はまだ親指かい?
    ちゃんとウンコはふけてるかい
    弱虫野郎め

    大岡信も含めて、
    この世代の詩人たちは
    結構仲良しやったんやないかなあ。
    80歳を過ぎて
    友人(ある意味で戦友)を亡くすというのは、
    どんな気持ちなんやろか。

    返信
    1. office-tal 投稿作成者

      tarakeさん、コメントありがとうございます。
      そういえば、谷川俊太郎、忘れてました。
      他の詩人たちがシュールレアリスムやモダニズムの強い影響を受けているのに対して、
      谷川は天性の詩人というか、独自な存在だと思っているからでしょう。
      心のこもったよい詩ですね。タイトルは?
      「弱虫野郎」はいまのマスコミだったら、クレームがつきそうですが・・・。

      昨年、『自由になる技術―80歳詩人のことばを聞く』という本を読み、
      某NPOで受け持った「エクリチュール」に関する講義のテキストに使用しました。
      谷川俊太郎と箭内道彦、宮藤官九郎の座談を本にしたものです。
      http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9C%E3%82%AF%E3%82%89%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3-%E8%87%AA%E7%94%B1%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E6%8A%80%E8%A1%93-80%E6%AD%B3%E8%A9%A9%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%91%89%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%8F-%E8%B0%B7%E5%B7%9D-%E4%BF%8A%E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4594065821
      元がテレビなので薄味ですが、そこでも天性の詩人ぶりを発揮されていました。

      では、またのコメントをお待ちしています。

      返信

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